いきぬくいみ
「何を考えているんだ?」
歩く速度を緩め、最後列まで下がってきたユマがそう言った。
冷たい、と形容するには冷たすぎる空気がひっきりなしに身体の横を通り抜けていく。
「・・・何でそんな事を聞く?」
「お前が何か考えてる様子だったから」
そっけなく言うユマは、フードを深く被りなおし、白い息を吐いた。
自分が考え事をしていたのが、それほどまでに表に出ていただろうか。
そう思いながらも、口は勝手に動いた。
「大切な人が、致死病に罹ったって聞いたんだ」
手は、知らず胸元のお守りを握り締める。
隣でユマが少し目を細めた。
ゆらゆらと、彼女の赤い髪が揺れる。
あの人の髪は、もっと薄くて、黄色味が強くて、と過去の記憶を呼び起こす。
ふうん、と低く聞こえた声で我に返り、横を見る。
何だよ、と不満の意を表せば、気に障ったなら謝る、と悪びれもせずに返された。
「本当に大切なんだな、と思ってな」
「全部、そいつに教わったんだ」
旅も、人生も、と続け、前を見る。
肩に掛けたベルトに手をやる。
そうか、と短く返したユマが、腰に下げた爆薬袋に手を伸ばす。
「くるな」
体勢を低くかがめて、臨戦体勢に入ったユマに気付いた前の団員が、伝令係となり、皆に伝える。
「ユマ、急いて死ぬようなダサい真似はするなよ」
「わかってる」
隊列を組め!というブラッドの声に、皆の動きが早まる。
いけるか、レオ、此方を窺うブラッドの声に、いけるさ、と答え、竪琴を肩から下ろす。
もう一度彼に会うために、今を生き抜こう、そう思った。