同居人について
「あ」
目を開けると、其処は湯気が立ち込める浴槽だった。
(あがんなきゃ)
浴槽の縁に手を掛け、力を入れる。立ち上がったのは一瞬。その後、重力に逆らえず、抜けていく力に驚きながら、浴槽の中に逆戻りする体を、客観的に感じた。だばん、と音を立てて体は湯の中に。力が出ない。くらくらする。回らない頭に苛立ちを感じていると、浴室の扉が開き、外の冷たい空気が流れ込んできた。
「何をしている、ベルフォルマ」
「のぼ、せ、た」
顔をどうにか横へ向けると、そこには同居人である男が呆れた顔をしていた。その男が近づいたかと思うと、体を引き上げ、湯から引きずり出された。
(さむ)
そのまま抱えられ、脱衣所で床に下ろされた。呆然としていると、上からバスタオルが降ってきた。それから、腕。どうやら、動けない俺の体を拭いてくれている。男の体が近くにあるのを良い事に、その体に凭れ掛かった。
「まったく、遅いとは思ったが・・・。本当に、ガキだな」
「うっせー。ちょっと考え事してたんだよ」
(アンタのこととか、さ)