ニヒト
真暗。目の前には、卵の形をした白いモノ。其処に、総士がいる。いる。なのに、どれだけ足を動かしても、その場所にたどり着けない。総士に、会えない。不意に其れが紫と黒の混ざったような、ひどく落ち着かない色をした球体に呑み込まれた。無。その場所は、無になった。其処に、総士がいたのに。何故、また、総士を奪う。帰せ。総士を、帰せ。もう、何処にもやらない!!!!!!!!!!
前へ突き出した腕を、何かに?まれて、眼を見開いた。
其処には、総士の顔と、木張りの天井があった。
「大丈夫か?大分、魘されていたぞ」
「あ、あ、あ」
いた。総士が。堪らず、抱きしめ、口付ける。お願いだから、拒絶しないでくれ。俺には、総士が全てだ。何度も、何度も、唇を合わせる。其処にある、存在を確かめる為に。
「一騎」
「何処にも、行くな」
「あぁ」
「三度目は・・・」
「大丈夫だ、一騎」
抱きしめてくれる身体が、確かに其処に。